Japan Cloud関連会社の魅力、特徴をお伝えするリーダーインタビュー企画。5回目に登場するのはBraze(ブレイズ)株式会社 代表取締役社長・菊地真之 (Max Kikuchi) 氏です。
本社は2011年、米国・ニューヨークに設立。「消費者とブランドとの間に心触れ合うつながり (Human Connection) を築く」をミッションに、消費者とブランドの間のインタラクションを強化する統合型カスタマーエンゲージメントプラットフォームを展開。Great Place to Work誌の「Fortune's 2022 Best Workplaces in New York」「Fortune's 2022 Best Workplace for Millennials」「2021 UK Best Workplaces for Women」に認定されるなど、世界で高い評価を得ています。
日本法人のBraze株式会社は、2020年10月、Braze社とJapan Cloudの合弁企業として設立が発表され、翌月、菊地氏が代表に就任。初年度よりメジャークライアントの契約が続々と決まるなど、急成長を遂げています。ファーストネームにちなんで、「MAXさん」と親しみを持って呼ばれる菊地氏に、前編では社長就任のきっかけと、右肩上がりの成長を支える原動力についてうかがいます。(後編はこちらから)

LinkedInでの“人違い”の友達申請がキャリアチェンジの発端!?
――インテック、SAPジャパン、アドビなど、IT業界で15年以上のキャリアを経て、外資系スタートアップの社長というキャリアチェンジを決意された経緯について教えてください。
菊地 実は、発端となったのはうっかりミスによる“人違い”でした。
――人違い?
菊地 今でもはっきり覚えているのですが、外出先で歩きながらLinkedInを見ていて、表示された友人に友達申請をするつもりが、うっかり隣の人に申請を出してしまった。それが、ジャパン・クラウド・コンサルティング社長の福田康隆さんです。謝りのメッセージを送る前に秒速で承認をいただき友達申請にOKをいただきました(苦笑)。セレンディピティのような始まりです。
これまでも、デジタルマーケティングのソリューションを扱った経験はありましたが、調べていくほどに、Brazeは新時代のマーケティングを切り拓くツールになりうるという確信を得ました。
モバイルアプリの普及によって、より“人間らしい”コミュニケーションが求められる中、リアルタイムかつ一貫性のあるブランド体験を提供するという点で、非常にケイパビリティが高い。Brazeのイノベーションを日本で展開することで、日本のマーケット全体のトップライン伸長に貢献できるのではないか。そんな思いからBraze日本立ち上げを決意しました。
今の日本は4年前の米国 ― 仮説に基づく「タイムマシン経営」で急成長を遂げる

――デジタル時代らしい出会いというのか、そんなハプニングが生んだ経営トップへの就任ですが、躊躇やためらいはなかったのでしょうか。また、何が選考の決め手になったとお考えでしょうか。
菊地 社会人になった時のキャリア観としては、インディビデュアル・コントリビューターとして営業やSEの分野で専門性を発揮できればいいと思っていました。考えを変える契機になったのが、アドビでデジタルエクスペリエンス事業にて戦略顧客担当チームを統括した経験です。
“ナイアガラの滝”のようなすさまじいスピード感でいろんな物事が進んでいく会社で、チームを率い、自分1人ではなしえないターゲットをクリアしていく面白さと、チームワークならではの仕事の醍醐味を体感し、その集大成として社長業を経験するのもいいチャレンジではないかと考えたのです。
Brazeに関心を持ち本社メンバーとの会話で実感したのは、Brazeは、「Culture Fit(社風に合う人か?)」ではなく、「Culture Add(会社に変化をもたらしてくれる人か?)」を重視した組織だということです。ダイバシティーに富み、理念を元に積極的に動き、クリエイティビティを大切にして革新をもたらすような組織づくりです。Brazeは「Culture Add」、つまりBrazeに新しいどんな「プラス1」をもたらす人間なのかを多角的な視点から見ていたと感じます。これは、私自身が立ち上げメンバーの採用インタビューをする立場になって、その重要性を再認識した大きな学びです。
そのようなダイバーシティ&インクルージョンの企業文化が根付いているBrazeは、本社から日本展開についても、「あれをやれ、これをやれ」といったオーダーはなかったように感じます。CEOからは「日本のビジネスの熟知しているプロフェッショナルはMaxだけだ」「私はアドバイスはできるが、全てはあなたがどう行動したいかだ。」と言われたのを今でも鮮明におぼえています。Brazeの中で、唯一、日本の文化、マーケットを知っている「プラス1」の人間として、マーケットをどうグロースし、そのためにはどういった組織構造、ビジネスモデルが必要なのか必死に考えた記憶があります。そして、こちらから意見を提案し、対話を重ね、アクションを起こしていきました。
そのうえで、本社メンバーへのアドバイスとして求めたのが、「4年前にBrazeは米国で何をやって急成長を成し遂げたのか」という点です。マーケティングDX普及率という観点で、私として今の日本は4年前の米国市場と極めて類似している、ととらえました。
その仮説に基づくならば、4年前のBrazeのGTM戦略を徹底的に学び倒し、当時の米国本社がやっていた成功方程式を上手くスライドすることに、日本市場で成功を収めるヒントがあると考えました。ソフトバンクの孫正義さんが言う「タイムマシン経営」ですね。
無論、米国のやり方をそのまま持ってくるのではなく、日本社会の直面している課題やチャレンジや、モバイルコミュニケーションの環境、メッセージングのツールの違いなどを踏まえた日本市場へのローカライズも並行して実施し、GTMをマッシュアップさせていきました。
日本企業における顧客理解への意識の高まりも受け、米国市場の成功法則に日本市場の独自性を掛け合わせることで、1期目からネット経済メディアのNewsPicks、日本最大級のコスメサイトの@cosme、ケンタッキーフライドチキン、日経新聞、サンドラッグ (敬称略)などから契約をいただき、現在、社員数は約40名、お客様企業数は約50社、日本国内でBrazeからメッセージを受け取る月間ユーザ数 (MAU) は1億1000を超えています。
私1人から会社をスタートし、想定以上の急成長を遂げることができたのは、日本市場に向けたBraze本社のサポート、多くの米国のエンタープライズ企業の日本進出の知見を持つJapan Cloudのベストプラクティスの支えがあったからこそで、これも他の外資系企業とは異なるメリットだと思います。
そして、世界最高峰のデジタルソリューションを基に、バックアップを受けながら、自分の力でGo To Marketをドライブし、優秀なメンバーを採用し、急成長を実現していく。こうした体験ができるのも、当社のような外資系スタートアップだからこそだと自負しています。
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