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面接で「マネージャーになりたい」と言われた時に思うこと
面接において「転職の理由」を伺う時に、少なくない回答です。
「マネージャーになりたい」
「マネージャーになれる環境を求めている」
賛否両論あるでしょうが、個人的には、転職を機にマネージャーを目指すというのはあまりお勧めできません(余談ですが、転職を機に「タイトルを上げたい」というのも同様に思います)。
過去マネージャー経験のある方であればともかく、初めてだけどマネージャーになりたい、それを転職と共に実現したい、というのはよく考えれば、お互いにリスクが大きい。「今じゃなくても良いけど、約束して欲しい、前提として」という場合もありますが、これも然りですよね。
ここでいう「マネージャー」とは、タイトルに「マネージャー」がついているということではなくて、いわゆるPeople Manager=管理職、という意味です。マネージャーではない方のことをここではIndividual Contributor(IC)と呼びます。
判断が難しい理由
マネージャーとしての失敗・成功体験がない方に、転職という何かしらの未知の領域が存在する新しい環境において、自社の大事な人材を束ねて(サポートし)、成果を最大化させることを任せる、という判断はどのような要素が揃えば、採用する側の会社はGoの判断ができるでしょうか。私には皆目見当がつきません。
先日、2年ぶりの海外出張に米国、アリゾナ、カリフォルニアに行ってきまして、様々な組織・人事課題について見聞きし、議論する機会に恵まれました。
その中で教えてもらったことで、特に印象に残っていることがあります。それは、米国のスタートアップの世界で、急成長する会社において、管理職経験のない方が、あっという間にICからVice Presidentとなり人を率いる立場にになってしまう。そこで、様々なPeople Issueが生じているというのです。Issueとは?と尋ねると、コミュニケーション、部下育成、パワハラ、セクハラなどなど。コーチングや1on1の仕方など教育を受けて、身につける間もなく管理職になってしまうことによって、組織に大変な歪が生じている、ということでした。
米国の管理職研修は、日本よりもだいぶ進んでいる印象をずっと持っていましたし、今もそう思っています。どんなに年を重ねても、大学院に通ってビジネスや人について学んだりする方も多くおられたり、人材マネジメントや、コーチングなど様々な教育機会が社内外に溢れています。そんな米国でさえ、こんな問題が起きているんだと、とても興味深くお話を伺っていました。もちろん、一定規模の会社でLearning/Talent Developmentの機能が整っている状況で、しっかりSuccession Planning(後継者育成)をしている間もない状況で起きているという特異性はあると理解しています。
私が必ず伺う「問い」
「マネージャーになりたい」と面接で言われた時に、私が必ず伺う2つの問いは、「なぜですか?」と「今の会社で目指してはいかがでしょうか?」というものです。前者については、(一人ではできない成果を出したい、と言われるケース多いです。そこに対してそれは何故?なぜ自分ができると思うのか?と踏み込むと)明確な答えがない場合も少なくないです。後者については、ほとんどの場合「ポジションがない。空かない」と言われます。私は意地悪で聞きたいのではありません。マネージャーとしての適性があるかどうかを判断するためには、面接という僅か数十分の時間での判断ではなくて、じっくり時間をかけて自分自身を知ってもらう必要があると考えているからです。その現場で成果を出すことは基より、それ以上に、人となりを周囲の複数の方々に知ってもらって
「人を任せたい=複数名をマネージしてもらうことで(最低でも足し算、願わくば)掛け算の成果を出せる人である=人の成長とモチベーションの向上、行動の質や量の向上を促せる人である=組織のパフォーマンス向上とその仕組み化を考えられる人である」
少なくとも可能性を感じ、任せてみたい、と思ってもらう必要があると考えています。
このように感じてもらいやすい人はどんな特徴があるでしょうか?
・個のパフォーマンスだけではなくて、チームの成果最大化に熱心である。
・成功事例や失敗事例、各種ナレッジをまとめて、皆に共有することを厭わない。実際に勉強会などのマスの場、あるいは個別にそれを「既に」実践している。
・若手や新人などに「教えること」が好き、かつ得意である。周囲が聞きに来る存在である。
・皆が納得するパフォーマンスを上げている、などなど。
他にも色々とありそうです。一方で、「マネージャー向きじゃないよね」という特徴があるもの事実です。ここでは触れません。
と、色々と考えていくとマネージャーポジションが空けば、マネージャー経験者(マネージャーとして実績を出したことを自他共に認めている方)を採用したい、となるのは自然なことだと思います。一般的に外資系企業の場合、マネージャーには組織目標だけでなく採用・評価などの大きな権限と責任が伴うとても大きな役割です。部下数名の人生(大げさかもしれませんが)がかかっていると言っても過言ではないと思いますし、今も昔も退職理由ランキングの1位は「マネージャーと合わない」ですよね。
「マネージャーになりたい人」が多過ぎ?
ところで、そもそもなぜ「マネージャーになりたい」という方がこんなに多いのでしょうか。私のガッツフィーリングですが、欧米企業よりも多い気がしてなりません。そして、これは私の仮説ですが、この国には「出世が大事」「出世=管理職」という固定観念が古くから醸成されているような気がします。
人事制度の観点から見ても、いわゆる等級制度(グレード)の階段が、常に管理職が上。IC向けの等級には天井があり、給与もそれ以上は大きく伸びないケースが多かった。10~15年ほど前からでしょうか?管理職でなくても専門職は管理職と同等の処遇をすべきという考え方が広がり、フェローという仕組みや、管理職と少し重複する位置付けとして専門職の高度な等級が誕生した会社も少なくないと思います。
かくいう私も20代前半の頃、周囲の先輩から、「目標は?」と聞かれた時に答えを持ち合わせていなかったため、適当に(それらしく)「30歳でマネージャー、年収1,000万円になることです!」と元気に答えていた時期がありました。何も裏付けも根拠もない。新卒の時に「自分は将来、経営者になりたいです」と面接の時にこれまた何の根拠もなく叫んでいたのに近しい気がします(この発言のせいで、私は希望だった営業職ではなくて人事総務部配属になってしまった気がします。今の自分のキャリアもここが出発点でした)。今考えても、「なぜ?」と問われると答えがありません。
マネージャーや経営者は、偉いとかなんとかではなく、「役割である」ということに気付くには私は比較的時間がかかりました。小さいチームながらマネージャをさせて頂いたことも、そうでない期間も両方経験ありますが、私はどちらも好きです(得意かどうかは問わないでください。。)。どちらも結局は役割を果たすプロフェッショナリズムが求められる。社会人20年となった今、ICで働いた時には気楽で良いなと思うこともあります笑。
最後にもう1点。
マネージャーの語源
マネージャーという言葉の語源を見てみましょう。下記は、私が人事コンサルタントをやっていた頃、大好きだったパートナーがクライアントに良く話していたことで、とても心に残っているものです。
Manager。分解すると、man「手」-er「人、もの」と分解され「手で取り扱う人」を意味しますが、その語源はイタリア語「manus」。昔まだ人が馬に乗る際に鞍も手綱もないころ、馬の様子を目で見て、馬の動きを体で感じて、手で馬を走らせる行為を意味していました。
つまり、マネージャーとは、相手(この場合は部下)の状況を感じ取る力があり、うまく一緒に進んでいける人ということだと思います。
これができるようになるには、訓練も必要でしょうし、人間としての成長も必要な気がします。だからこそ、この世の中には「優秀な社員をマネージャーにしてみたが、ワークしなかった。何度か挫折をして、それを乗り越えてとても優秀なマネージャーになりました」のような話がたくさん存在するのだと思います。
焦らずまずは結果を出そう
転職時にマネージャーを目指すのは、どうか?というのが本ブログのテーマでした。確かにポジションがないという現実もあるでしょう。しかしながら、成長企業にはポジションが生まれます。成長していない企業であればやむを得ないといのもあるでしょう、であれば成長するポテンシャルのある企業に足を踏み入れて、Individual Contributer(非管理職)として成果を出し、自分を知ってもらい、マネージャーを目指すのがやはり良いのではと思うのです。
余談ですが、そもそも自分ってどんな人なのか、マネージャーに向いているのか、なかなかわかりませんよね。大いにバイアスがかかっているものと思います。そんな時は、自分以外で(本当のことを言ってくれるタイプの)方に勇気をもって聞いてみることをお勧めします。
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