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2025.06.17

リーダーに訊く!第10回 Gainsight 代表取締役社長 絹村悠氏 |「ゼロイチに挑むキャリア論」 仲間と共に第一人者を目指す理由

Japan Cloud

Gainsightは2011年に米サンフランシスコで創業された、カスタマーサクセス分野のパイオニアです。顧客を起点とした成長戦略の実践支援を目的に、カスタマーサクセスだけでなく、プロダクト体験・教育体験・コミュニティなどポストセールスにおける顧客体験を網羅的に提供するSaaS製品を提供しています。今では、顧客起点での成長戦略を推進する存在として、世界中の企業に支持されています。また、ソフトウェアレビューサイト「G2」では、カスタマーサクセス部門で常に最高位のリーダーとして評価され続けています。

日本法人は2022年4月に設立され、絹村氏が代表取締役社長に就任。カスタマーサクセスによる顧客企業のビジネス成長の加速を推進しています。

“ゼロイチ”に挑むキャリア戦略──成長機会を引き寄せる思考法

――絹村さんは、日本ヒューレット・パッカード(現日本HP)入社を皮切りに、Tableau Japan、セールスフォース・ジャパンでの執行役員というキャリアを経て、Gainsight日本法人に社長として入社されました。日本市場ではまだ認知度が低かった外資系スタートアップ企業トップへの転身を決めた背景について教えてください。

絹村 1つ目の理由としては、そもそもの私のキャリアに対する考え方が挙げられます。

大学卒業後に入社した日本HPには十数年在籍したのですが、その後は3~4年スパンで新しいチャレンジをしています。

キャリアの考え方を変えたのは、日本HPに在籍していた際に、先輩社員から受けたアドバイスを基に「仕事のスキルや能力を向上させたいなら、コンフォートゾーンを超えていくようなアクションを意識的に実践していかないといけない」。そう考えたことが転機となっています。

1つの会社でキャリアを磨くのも素晴らしいことだと思いますが、当時の私は仕事がルーティン化し、自分ができることが頭打ちになっていくようなジレンマがあったんですね。

そこで決めたのが、「3~4年程度のスパンでキャリアを見つめ直し、新しいチャレンジで、それまでの限界値を超えた実績を出していく」。さらに、「伸びしろを追求していくならば、自分ができないであろう仕事にチャレンジし、挫折を乗り越えていくことで自分のキャパシティを広げていく」。この考え方が、私のキャリアを決める際の軸となっています。

Tableau Japanでは、入社後3年間、中堅中小領域における営業部門の立ち上げと拡大に携わり、2019年からはセールスフォースの傘下に入り、学べることは徹底的に学ぼうという3年間を過ごしました。

「次は何にチャレンジしようか」。そう考えていた時に、Gainsightの社長就任の話をいただいたのはまさに絶好のタイミングだったと思います。

1つ目の理由に関連して、2つ目にTableau Japanで体感した、「ゼロイチ(0から1を生み出す)の醍醐味」が挙げられます。

日本HPからTableau Japanに転身した2016年は、Tableau日本法人が設立3年目を迎えた年でした。まさに何もないところから価値を生み出さねばならないという立ち上げフェーズに身を投じて、これこそが自分のキャリアにおける生きがいだ、と感じたんです。

1年目から働いていた社員たちの積み重ねがあって今があると考えると、彼らが本当に輝いて見えて、「自分も創業1年組として入りたかった」と。そこで、ゼロイチからのチャレンジというチャンスが到来したことは、必然のめぐり合わせだったのかもしれません。

「ヒューマン・ファースト」に共鳴──Gainsightとの出会いと価値観の一致

――テクノロジー系の企業で一貫してデジタル・DX回りの仕事に従事してきたキャリアがありながら、「Gainsightの社長=自分にはできそうもない仕事へのチャレンジ」と捉えた理由は何でしょうか。

絹村 お話を聞いた当初は、外資系日本法人の代表という選択が、私にとっては大きなチャレンジと捉えていました。

当時の私の日本法人代表のイメージは、エンタープライズ向けの営業でバリバリと活躍し、トップセールスを実現してきたような人が代表となって日本市場を拡大していくというもので、世の中の一般的な常識もそうだったと思います。

その観点から、私自身のキャリアを見ると、日本HPではEコマース領域の顧客開拓から定着までのプロセスの実装を、Tableau JapanではSMB(中堅中小企業)領域の営業部門の立ち上げなど、常に3年サイクルで自分のキャパシティを広げるために様々なチャレンジをしてきました。

一般的に外資系企業のカントリーマネジャーになるような王道のバックグランドとは違う、いわば泥臭い傍流のキャリアで、正直、王道を走っていない劣等感のようなものもありました。

Japan Cloud代表の福田(康隆)さんからお声がけをいただいた際にも、最初は「自分は代表に向いていないと思います」と率直にお答えしたのですが、そこで言われたのが、「自分で決めつけるのは良くない」という言葉でした。

ならば、「人から評価していただいて、チャレンジできるフィールドがあるならばやってみよう」。そう考え、引き受けることを決断しました。

――カスタマーサクセスという分野やGainsightに対するイメージはいかがでしたか。

絹村 Tableau Japan、セールスフォース・ジャパン時代にも、いわゆる「Land-and-expand(小さく始めて大きく育てる)」戦略で、顧客の成功をベースにビジネスを拡大していくというモデルを進めていくなかで、同社CEOの著書「カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則」も読んで、会社の実績やカスタマーサクセスの概念については承知していました。

その上で、会社のプロダクトや実績、バリューなどを調べていく中で、自分が求めている会社像と完全にマッチしたことも、Gainsightを選ぶ大きな動機の1つになりました。

Tableau時代に学んだことの1つに、「人の可能性をデータで解き放つ」という理念があります。お客様はもちろん、自分たち従業員も自身の強みにフォーカスして可能性も信じてやっていく大切さを学び、今後、新しい事業に携わることがあれば、人の強みや長所にハイライトし、追求していけるような会社や組織を作っていきたいという思いはずっと抱いていました。

これは、まさにGainsightが掲げるコアバリュー「ヒューマン・ファースト」と完全にマッチしていて、直観的に私が行くべき会社だと思えたのも大きかったですね。

実際に採用インタビュー前に商談のプロセスを体感してみようと、問い合わせフォームを通じて営業担当にコンタクトしたところ、プロダクトの話を一切せずに、ひたすら私のビジネスの課題について耳を傾け、解決策を提供してくれるという、まったく新しい営業プロセスを目の当たりにしました。

プロダクトの思想、会社の文化に、しっかりと「ヒューマン・ファースト」が貫かれているという実体験を得たのも背中を押してくれました。

Japan Cloud内の社長ネットワーク──スタートアップ経営者同士の学びと支え合い

――実際にJapan Cloudの関連会社であるGainsightの代表として、社長に就任して以降、感じたやりがいやメリットについて教えてください。

絹村 Japan Cloudの関連会社としてのメリットや特徴は大きく3つあると考えています。

1つ目のポイントとして、すべてのファンクションを自分がレポートラインで見て、責任を持って意思決定できる点が挙げられます。

事前に福田さん(Japan Cloud)から伺って、代表を引き受けた理由の1つでもありますが、従来の固定概念として持っていた「外資系日本法人の社長=日本市場の営業マネジャー」とは異なり、自分がこれまで培ってきた幅広いキャリアやナレッジが活かせる役割であることも魅力となっています。

2つ目として、社長経験のないカントリーマネジャーに対するサポート体制です。企業立ち上げに際しては「Playbook」が揃っていて、本業にフォーカスできたのは非常に大きかったと思います。

3つ目に、同じJapan Cloudの関連会社社長の人脈を通じて情報交換ができる強みが挙げられます。GMミーティングや、時には飲みに行ったりと、交流を通じて様々な事業の成長モデルについて触れられるのは、貴重な財産となっています。

――米国本社との関係性はいかがでしょうか。

絹村 実はGainsightが英語圏以外でビジネスを展開するのは、日本が初めてのケースとなります。本社に対してダイレクトにレポーティングをしているので、フィードバックもどんどん返ってきますし、距離感が近いのはいいですね。

半面、日本市場の独自性などについては解像度が高くないため、どうコミュニケーションを取り、正しく伝えていくかは難しさを感じるポイントでもあります。

日本市場への期待値は高く、カスタマーサクセスから周辺領域にプロダクトも拡大し、提供できる価値も広がりを見せる中、従来の主要顧客であるSaaS企業以外に市場を広げていけるよう、本社ともタッグを組みながら事業の拡大を進めています。

経営課題に伴走するカスタマーサクセス──事業成長を加速するプロフェッショナル組織とは

――カルチャーや規模感など、今後、どのような組織を目指していきたいと考えていますか。併せてどんな人にこの仕事にチャレンジしてもらいたいかも、お聞かせください。

絹村 現在、会社としてはカスタマーサクセスおよび広義で言うところのSaaSのレベニュープロセスに関するプロフェッショナルが集結し、質の高いサービスとナレッジの提供を目指すという少数精鋭のチームで事業を展開しています。

意識やスキルも高い仲間と一緒に働けること自体がおもしろいですし、自分自身のやりがいにもつながっています。

組織の成長スタイルは色々あると思いますが、今は人材を大量に採用した組織拡大を目指すよりも、プロフェッショナルな人材で、レベニュープロセスの各カテゴリーのトップランナーたちが集まるような基盤を作ることにフォーカスし、組織作りを進めています。

今年度内を目安にベースができたところで、次に続く若い世代や意欲のある方々に、ジョインしてもらって広く活躍していただければと考えています。

目指す人材像としては大きく3つが挙げられます。

1つ目は、ゼロイチで何もないところから市場を作っていくことに情熱を傾けられるか。自分で道筋や市場を作ることに対してパッションを持って取り組み、自らロールモデルとしてビジョンを掲げ、発信していけるような方と一緒に働きたいですね。

2つ目は、カスタマーサクセスの会社として徹底して顧客志向を貫き、Gainsightがミッションとして掲げる「ヒューマン・ファースト」で仕事に取り組めるかどうか。

3つ目として、失敗を挫折と捉えるのではなく、そこから学びを得て、新たなチャレンジができるような方と一緒にチャレンジができればと考えています。

こうした素養を持って、カスタマーサクセスが目指すべき事業成長に向けて、顧客企業の経営課題に寄り添い、事業の成長プランをわかりやすく解説し、一緒に伴走していけるような人材に仲間に加わってもらえればうれしいです。

――日本のカスタマーサクセス市場の今後についての意見もお願いします。

絹村 従来の日本のSaaS企業におけるカスタマーサクセスというと、製品の解約抑制を目的にオンボーディングを徹底してやっていくという概念が根付いていました。

しかし、本来のカスタマーサクセスはそうではなく、まさに「ヒューマン・ファースト」で、顧客企業の事業の成功や、関わる担当者のキャリアアップを含め、人生がプロダクトによって前進していくようなサポートにこそ本質があると考えています。

そして、プロダクトによって成功した顧客がプロダクトの熱狂的なファンとなって、新たな契約や商談につながっていく。お客様が自分たちのビジネスの成長を牽引していく、Customer-led Growthというモデルの実現がカスタマーサクセスの根幹であり、そういったモデルを日本で定着していければと考えています。

キャリアに迷ったら「決断と行動」──後悔しない道を選ぶための2つのアドバイス

――今、キャリアに悩んでいる読者の方に向けてのアドバイスをいただけますでしょうか。

絹村 私が提言できることで申し上げると2つあります。

1つ目が、様々な選択肢がある中で、どれも正解であり間違いはないということです。
だからこそ、1つを選んだら後悔しない、あるいは間違いではない選択肢にするために、いかに動くか。選択後のアクションこそが大事だと思います。

そして、思ったようにうまくいかなくても、自分にとって学べる環境とプラスに捉え、次の行動にどうつなげていくか。そんなポジティブな考えで行動を起こしていけば、おのずといろんな道が開けていくと思います。

2つ目が、簡単に結果が出ないとしても、3年なら3年で何らかの成果を出すことにこだわっていくこと。私が福田さんに声をかけていただいたように、多くの人が地道ながんばりを見てくれて、次のチャンスにつながるのではないでしょうか。

悩むより決断する。3年間で何らかの結果を出す。失敗も含めて、その間に何を学べるかをしっかり考える。このサイクルをくり返すことが、キャリアアップの一番の近道ではないかと思います。

――最後に、カスタマーサクセス分野やGainsightに興味を持った方へのメッセージをお願いします。

絹村 今、カスタマーサクセスの事業を広げていくうえで、マーケットサイズの拡大が大きな課題となっています。その課題解決に向けて、プロダクトの提供価値をどう広げ、高めていくか。メンバーと一緒に、頭を悩ませながら、マーケット拡大に向けた取り組みを推進しています。

決して平たんな道ではありませんが、だからこそ、成長余地は大きい。まさに、これから市場を作っていくフェーズにあって、カスタマーサクセスのフィールドにおいて第一人者になっていける可能性が十分にある会社だと考えています。

チャレンジングな環境で働き、自分の限界値を伸ばし、成長していきたいという方、ぜひお待ちしています。

Gainsight

Gainsightは、カスタマーサクセス、製品体験、コミュニティエンゲージメントに焦点を当てた業界随一のCustomer-Led Growthプラットフォームを提供し、あらゆる活動の中心にお客様を据えたヒューマンファーストの活動を可能にします。

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