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専門化と横連携の両立を目指して|パイオニア様
こんにちは、Japan Cloudの鶴原です。パイオニア株式会社モビリティサービスカンパニーのキックオフに、弊社代表の福田と参加しました。今回はその内容についてお伝えします。
パイオニアのモビリティサービスカンパニー様では、クラウド型運行管理サービスであるVehicle Assist(ビークル・アシスト)をはじめとし、クルマのリアルタイムな走行データをもとに、ドライバーや運行管理者の利便性・効率性の向上を支援するサービスを展開されています。
新年度から新たな組織体制になったモビリティサービスカンパニー様ですが、『THE MODEL』を参考にされた、ということがきっかけで、今回の機会につながりました。
車載器を中心とした従来のハードウェア販売モデルから、ソリューションサービスへと移行をすすめる中で、果たして分業と連携をどう実現していくのか?同カンパニーCOO兼カスタマーサクセス統括部長の飯間貴昭様をモデレーターに、CEO 細井智様と福田の対談形式でお話が進みました。
今回、当日の様子をパイオニア様の公式 note にもまとめて頂きました。こちらも是非ご確認下さい。
「専門化」と「横連携」を両立できる組織へ
今回、『THE MODEL』に書かれている以下の流れを意識した組織に変更を行った。なので、ここの理解を皆で深めたい。この分業体制の利点や運営していく上での注意点などがあればお聞きしたい(飯間様)
(福田)
ありがたいことに、THE MODELという言葉が予想以上に広まっている。しかし、これを「マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの縦割り組織と同義」と誤って捉えられているケースが多い印象がある。それは一つの側面でしかない。
一番大事なのは、仕事に「専門性」を持つこと。これは量・質、双方の観点を包含している。お客様の数が増えれば、一人で全てに対応できなくなる。また、自分たちの売り物が増えてきたら、各自が専門性を持って役割分担をしながらチームとして動くことが重要になる。その時の区切り方の一例が、上記の役割分担というだけ。この切り方は会社によって異なるはず。
また、「どこに課題があるか?」を把握する上でも、認知・リード・商談・カスタマーサクセス、とプロセスを区切ることを意図している。課題の箇所を見つけるには可視化が必要になる。プロセスを区切り、ツールを使ってデータを見える化していくのが考え方のベースにある。
なので、THE MODELは皆さんが等しく適用すべき「型」ではなく、「思考のプロセス」と捉えて欲しい。全体像を見える化し、課題を見つけていくプロセス。
今度は細井さんに伺いたい。新しい組織づくりにあたり、どんなポイントを意識したか?参加者に共有して欲しい(飯間様)
(細井様)
今年 1月頃から、この組織モデルに変えていくことを皆さんに伝えはじめた。各々が担当領域におけるスペシャリストになっていかなければならない。
組織発表を聞いた皆さんは「縦割り」と感じるかもしれない。自身の担当領域の専門性を持つことは非常に重要。
一方、スペシャリストになろうとするが余り、「自身の担当領域から出れない」というサイロ化の危惧を強く抱いている。「自分は営業」と考えて、それ以外の仕事を無視してはいけない。人は看板を背負うとそれ以上のことが出来なくなる。そうならないで欲しい。
去年 8月頃からずっと考えて、結局、立ち戻った組織像が、福田さんの本に書かれていた内容だった。組織変更を機に、「スペシャリストでありながら横連携していく」という2つを両立していきたい。
なお、上記で表示されている図は「認知拡大」がスタートポイントだが、パイオニアはその一歩手前の「新規プロダクト開発」から考えることができる。これは強み。組織を作っただけでは物事はうまく回らない。各人が腹落ちして、どう動くか、各々が考えられるようにしていきたい。
データ(客観)とトップの考え(主観)の両方を共有することで、皆が全体像を意識できるように
そうは言っても役割分担すると、どうしても他責になりがち。これは現実的には、どう工夫すれば良いか?(飯間様)
(福田)
私も今までも他責や部門間の刺し合いなど、色々と経験してきた。これはしょうがない。専門性を持つためにKPIは必要だし、評価指標があれば、そこを目指して行動するのは人間の性であり、やむを得ない。
ただし、会社として何を目指しているのか?会社としてのゴールや全体像を、皆が意識することが重要だと思う。
そして「問題」が起きた時、その現象をどう理解するのか?受注率が悪い=営業のスキルが低い、と短絡的に見てしまいがち。しかし、掘り下げてみると現場マネジャーが「売上が上がらないなら、せめて商談は積め」という指示を出して、中身の薄い商談が多くなっていたことが判明した。この場合、手前のインサイドセールスやマーケティングに問題がある可能性もある。
今みたいな話は「主観」だけで話していても刺し合いになる。「客観」的なデータ整備が必要だし、問題の根本原因をしっかりと掘り下げていく上層部の姿勢も重要。
刺し合いが日常茶飯事の中で、『仕組み』でそこを解決した経験はあるか?(会場参加者)
(福田)
マルケト時代、社長として全体像を見せてあげることは意識していた。どうしても皆、自分の仕事に精一杯で、周りが何をやっているかが見えなくなる。そうなると全体的視点は持ちようがない。
例えば、営業を新規に採用したらポストセールスの導入プロジェクトにまずは入って貰ったり、インサイドセールスにはマーケティングのミーティングに参加してもうなど。横のチームがやっていることを理解させる「仕組み」は色々と試した。また、全体像を皆が見ることができるような、標準化されたダッシュボードも用意した。
あとは毎週月曜に朝礼を行っていたのだが、ここで「今、会社全体で起きていること」「社長として考えていること」を意識的に全社員に共有していた。
セールスフォース時代、マーク・ベニオフから「トップの仕事は部門間に情報を流通させることだ」と聞かされたことがあるのだが、これはとても勉強になったし、意識している。
(細井様)
「全体感やトップとしての認識・考えの共有」、これは自分も最近は忙しさにかまけて疎かになっていた気がする。改めて意識して皆に共有していきたい。データと主観の両面を発信していくことが重要だな、と改めて再認識できた。
すべてのプロセスでカスタマーサクセスを考える
今までは車載器というハードウェア前提のサービスを売っていた。ここから、ハードウエアがないピュアなサービスを売っていく体制へ移行しようとしている。車載器は一度導入されると、簡単に切り替えられることがなく「Sticky」なのだが、ハードがないと導入されやすい一方、解約もされやすい。いわゆるSaaS事業。ここをうまく伸ばして行くコツは何かあるか? (飯間様)
(福田)
Stickyという点は実は大切。業務にStickyになるポイントを組み込むことが重要ではないか。
私は業務アプリケーションのSaaSに長く関わっているが、単体業務の導入だとどうしても解約されやすい。以前にSFA (営業支援システム) 単体ではなく「請求書発行アプリケーション」を組み合わせて提案した場合は解約率が大幅に改善した経験がある。請求書発行は必ず行われる業務なので、結果的にその前後の業務プロセスまで管理するSFAがなくてはならない存在になったのが理由。こうしたSticky ポイントを意識的に作り出していくことは、一つの解になるかもしれない。
もう一つは、自社ソリューションの「価値」を正しく理解すること。導入のハードルが低いソリューションほど解約されやすい。売るのが難しく、価格が高いソリューションほど解約されにくい傾向はある。「小さく入れて、大きく育てる」というのは一見聞こえは良いが、大きくなった時の姿を顧客と合意できていなければコミットメントのない単なるトライアル導入で終わってしまう。初期段階から如何に正しく価値訴求をしていくかが重要。決して、自社ソリューションの価値を矮小化してはならない。
また、カスタマーサクセスの世界では「売った後のオンボーディングが重要」と言われるが、これは一歩間違えると「自社目線」で終わってしまう。そうではなく、「お客様がこれを使ったことで、どんな価値が出るのか?」、つまり顧客にとっての成功とは何かを突き詰めること。基本的に「価値」はB2Bである以上、売上向上・コスト削減、リスク低減のいずれかに寄与するはず。
(細井様)
カスタマーのサクセスをしっかりと定義する必要はある。自社のサクセスではない。それはCSMだけが考えるのではなく、全部門で考えること。
(飯間様)
ここはCS部長として非常に大事にしたい点だし、皆さんにも協力してもらう旗振りをしていきたい。
キャリアデザインと「2つ上の視点」を持つこと
分業をしていく中で、一メンバーとしてその領域だけをやっているとモチベーションが続かないし、一つ上の視座が持てない、というリスクがありそう。どうチームとしての一体感を醸成していけば良いだろうか? (飯間様)
(福田)
会社として、様々なキャリアパスを作ってあげることが大切。
外資系IT企業では営業未経験者向けのキャリアパスとして最初にインバウンドのインサイドセールスを担当して、その後アウトバウンド担当、中堅・中小企業担当営業、大企業担当営業というステップを踏むのが定番になっている。日常業務をこなしながら、自然と営業に求められるスキルを身につけることができる。
似たようなキャリアパスはマーケティングやポストセールスでも作れるし、部門間で閉じる必要もない。それまで経験した業務との関連性がない「ジョブローテーション」ではなく、育てたい人材像を描いて「キャリアパス」を設計することが重要。
このキャリアパスは会社が用意した方が良いのか?上司が考えるものなのか?自分自身で切り拓くべき、という考えもありそう。福田さんはどう考えているか? (飯間様)
(福田)
まず会社として、自分たちの事業を回す上でどのような役割のスペシャリストが必要か、をしっかりと見極める必要がある。例えばSaaSだからといって必ずカスタマーサクセス部門が必要とは限らない。他社がやっているから、という安直な理由で部署や役割を設けてはならない。
会社として求められる役割やそれに向けてキャリアパスを設計した後は、どのようなキャリアパスをたどるのかについて上司と部下とのコミュニケーションで作り上げていくものではないか。1 on 1ミーティングははそのような会話をするために存在する。
(細井様)
一般的には「外資は単一ロール、日系企業ではジョブローテーション」と思われがち。自分は外資が長いが、8事業部10ロールという幅広い経験してきた。それは自分の上司から「常に2つ上のポジションの視点を持て」と言われたことがベースにある。
この視点が持てると、視野が広くなる。そこに貢献しようと思うと、隣の領域の知識を持とうとするし、横の仕事もしてみよう、という気持ちになる。また、連携しないとうまくいかないことも理解できる。この「常に2つ上の視点」は皆さんにも持って欲しい。
THE MODELは「思考プロセス」であり、改善し続けることが重要
THE MODELの本を書かれて約3年が経過されているが、この間にさまざまな企業を見聞きしている中で、「補足しておいた方が良いこと」等があれば、最後にコメントをお願いしたい (細井様)
(福田)
繰り返しになるが、THE MODELは「型」ではなく「思考プロセス」。思考プロセスを書籍にするのが難しかったので、自分の体験談を書いた。ここに完成形はない。常に試行錯誤しながら、改善をし続けていくことを皆さん、意識して欲しい。
最後に 〜鶴原所感
細井さん、飯間さん、福田の対談を聞いていて、私自身、何となく意識はしていたものの、無意識下に追いやられていた、以下のようなポイントを改めて考えさせられました。
- 客観と主観の両にらみで、全体像を理解すること
- 顧客目線で考えること
- 常に2つ上の視点を持つこと
- プロセスに完成形はなく改善をし続けること
これは非常にベーシックなことだとは思いますが、常に意識せねば、と再確認できました。
私自身、マイクロソフト時代に細井さんが技術から営業、マーケティング、パートナーアライアンスなど様々なロールを経験されていたのを拝見していました。また、それがゆえに細井さんは常に視座も高く、納得感の高いお話をされていた印象を持っていました。
今回の機会をきっかけに改めて上記のような点に触れることができたのは、とても貴重な経験でしたし、非常に狭い IT業界に勤めていて良かったな、と思える瞬間でもありました。細井さん、飯間さん、この度は貴重な機会をありがとうございました。
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