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リーダーに訊く!第8回 WalkMe 代表取締役社長 小野真裕氏 前編|「Regret Minimization Framework」のマインドで 後悔するぐらいなら新しいチャレンジ、 ワクワクする道を選択する
Japan Cloudやその関連会社の魅力や特長、会社を率いるトップの人間像に迫るリーダーインタビュー。8回目に登場するのは、WalkMe(ウォークミー)株式会社・代表取締役社長小野真裕氏です。
デジタル・アダプション・プラットフォーム(以下DAP)という新しいカテゴリーを切り開いた、WalkMeは2011年に創業。WalkMeのDAPは、企業が導入したシステムの活用状況を分析・改善し、ユーザーの “SaaS/システム利用のつまずき”を解消しデジタル体験の向上やDXを推進するクラウド型ソリューションです。また、DAPは2017年頃に定義された製品分野で、ガートナー(Gartner)やエベレストグループ(Everest Group)などのグローバル市場調査会社も調査対象市場として扱い、WalkMeはリーダーに選出されています。
ノーコードツールによる簡易な開発により、システム上にガイドやナビを簡単に表示でき、ユーザーの誤入力・誤操作を未然に防止ほかユーザー利用状況のモニタリングまでカバーし、従業員や顧客のユーザーエクスペリエンスの向上、テクノロジー価値の最大化、企業の喫緊の課題であるDXを加速させるソリューションとして注目を集めています。
現在、WalkMeの顧客数は世界で2000社を超え、本社は2021年6月にはNASDAQに上場を果たしました。
日本法人のWalkMe 株式会社は、WalkMe社とJapan Cloudの合弁会社として、2019年6月に設立され、小野氏は日本法人最初のセールスエンジニアとして同年11月に参画。市場開拓を推進すると共に、会社全体の成長基盤の構築に従事し、2023年2月、社長のバトンを引き継ぐこととなりました。
前半では、WalkMeのさらなる成長をけん引する小野氏に外資系スタートアップへのキャリアチェンジを決意した理由、働きがい、社長就任の際の思いについても振り返ってもらいました。
死ぬ前に、「あの時にあれをやっておけば」と後悔しない決断をする
――小野さんはNEC中央研究所で研究者としてキャリアをスタートした後、コンサルタントに転身し、アクセンチュア、日本IBMなどを経て、設立されたばかりのWalkMeに参画されました。小野さんが転身を決意する際に大事にしてきた軸や条件などがあれば教えてください。
小野 これまでのキャリアの変遷を振り返ると、「この仕事をやりたい」という思いで転身を重ねてきたというのが正直なところですが、決断する際の軸を1つ挙げるなら、ジェフ・ベソスがアマゾンを創業する際に考えたという「Regret Minimization Framework(後悔最小化フレームワーク)」が挙げられます。
最初の大きな決断はNECの研究所で研究テーマを変えたいと考えたことでした。それまで従事していたネットワークに関する研究から、まだ、産業界ではホットとは言い難かったAIを研究したいと思い、会社を辞めて大学の博士課程に戻ることにしました。
決心する時に頭に浮かんだのが、「自分自身が80歳になったときを想像して、そこから振り返った時にやらないと後悔するかどうか」というポイントで思考するという「Regret Minimization Framework」で、私流の解釈としては死ぬ前に、「あの時にあれをやっておけばよかったな」と後悔するぐらいなら、とりあえずやってみよう、と。
そこで3年間、研究に従事した後、アカデミックに社会課題を解き明かすのも面白いけれど、ビジネスで実践したほうが世の中にもインパクトを与えることができるんじゃないかと、コンサルタントに転身しました。
アクセンチュアでは、コンサルタントとして厳しく育ててもらいました。企業の競争において勝つ戦略をどのように作るのか。どのように論点を見極め、整理し、問題解決していくのか。そういった経験があるからこそ、経営者として今曲がりなりにもやっていけているのだと思っています。
そして、日本IBMではアナリティクス部門を大々的に立ち上げるというタイミングで、コンサルティング部門のパートナーとして、AI&アナリティクスを活用した戦略立案、実行支援など様々なプロジェクトに従事しました。
研究者時代のテーマとコンサルティング業務が結びつく形で、やりがいを持って仕事に従事していましたが、一定の役職に達し、現状に満足してしまうと、新しいチャレンジをしたくなる性分なのでしょうか。小さな会社を成長させ、大きくする経験をしてみたいと考えていたことも、今のキャリアに繋がっています。
日本で新しいマーケットを作っていく醍醐味
――数ある選択肢の中から、WalkMeを選んだ理由、また外資系スタートアップの働きがいについて、どうお考えでしょうか。
小野 日本IBMでAI・アナリティクス領域に携わっていた際に感じていた課題を、WalkMeのDAPこそが解決できるテクノロジーだと確信したことが、大きなポイントとなっています。
せっかく新しいシステムやソフトウェア(SaaS)を導入しても、現場でうまく使いこなせていない、誤った使い方をしてしまう、いわゆるデジタル・フリクションがボトルネックとなって、目指す業務改革が進まないというケースにたびたび遭遇してきました。
テクノロジ―の力を企業の競争力に活かすことが肝要であることを大前提に、重要なのは「いかに使いこなし、活用度を向上させるか」。
データドリブンで、アジャイルにUIUXを改善することで、誰もが迷いやストレスなくデジタルシステムを使いこなすことを可能とする。一言でいえば、システムやAIの活用度を上げる“てこ”となるDAPこそが、70%が失敗すると言われている企業のDX推進のドライバーになるのではないか。
企業のデジタル投資価値の最大化を実現するプラットフォームに将来性を感じ、さらにまだ日本ではなじみのない市場を自分たちで作っていく経験ができることにも魅力を感じました。
入社して外資系スタートアップならではの良さとして実感したのは、ロジックで動けることの働きやすさです。自分が何かをやりたいと思って、手を挙げればアサインされ、ダイレクトに会社の業績につながりうることが挙げられます。仕事に対する価値観は様々ですが、会社の成長に大きく寄与するほうに私自身はやりがいを感じたということです。
2つ上のレイヤーの視点で物事を考える
――社長就任に際しては、どんな思いで引き受けられたのか教えてください。
小野 入社時はセールスエンジニアからスタートしたのですが、それも始めての経験で、その後、マネジャーになり、「Chief Customer Value Officer」として他のチームのマネジメントも兼務するようになったのもすべて新しい経験でした。
その延長戦上としてジャパンというチームを任されたのならば、やったことがないことでも、チャンスがあるならばやってみよう。もちろん責任の重さや不安も感じつつ、「Regret Minimization Framework」の考え方に沿って、ワクワクする道を選択したということですね。
また、コンサルタント時代から上司に言われ、習慣づけてきた「2つ上のレイヤーの視点でモノを考える」という姿勢が今のキャリアにつながった側面もあるかもしれません。
一担当ならば課長の視点、課長だったら部長や役員の視点、それぐらいのレベルで物事を考える。セールスエンジニアだった時も、担当としての仕事はやりつつ、マネジャーだったら、ジャパンの社長だったら、どうするのがいいかというのを常に考え、提案してきました。一緒に働く社員にも、自分のロールにこだわらず、プロアクティブな姿勢で提言してほしいと常々伝えています。
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