開催レポート|ジャパン・クラウド主催セミナー 〜レベニュー最大化のための営業変革
鶴原 鉄兵
こんにちは。ジャパン・クラウドの鶴原です。2023年8月1日に弊社主催のエグゼクティブセミナー(招待制)を実施いたしました。テーマは「レベニュー最大化のための営業変革」です。ゲストにEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社パートナーの千葉 友範 様、Gainsight株式会社 代表取締役社長の絹村 悠 氏、Xactly株式会社 代表取締役社長の福眞 総一郎 氏 をお迎えし、非常に活発な議論が行われました。
当日はジャパン・クラウド・コンピューティングCEO アルナ バスナヤケ からご挨拶の後、千葉様のご講演、その後にパネルディスカッション、懇親会という構成でした。
本ブログでは「レベニュー最大化のための営業変革」をテーマとしたパネルディスカッションの内容について、皆さまに情報共有したいと思います。
「レベニュー最大化」に向けた3つの論点
冒頭、本セミナーのテーマ選定の背景をモデレーターを務めた鶴原から簡単にご説明しました。
以下のスライドにある通り、今日、日本で叫ばれている「生産性」「競争力」「低賃金」といった課題は、基本的には各企業が「売上成長を実現できていない」ことに起因していると考えられます。この売上成長を実現するレバーは、「新規顧客の獲得」と「既存顧客の拡大」の2つしかなく、それぞれの論点についてパネルディスカッションで討議しました。
また、セッションで出てきた様々なアイデアを実現させるためには、何を考え、動く必要があるのか?という点についてもカバーしました。
論点①:なぜ新規獲得が進まないのか?
先発完投型 vs. 分業
(福眞)※以後、敬称略
営業を20年やってきたが、非常に辛い仕事。毎年、高い目標は課せられるし、事務作業を含む膨大な業務をこなさないといけない。所属していた外資系企業では、この大変な業務を「分業」でカバーしていた。そして、営業は「新規受注」にフォーカスすることを求められた。
お客様の話を聞いていると、今も売上にまつわる全ての業務に営業が関わっており、いわゆる「先発完投型」が多い印象を持っている。これが生産性を下げている一つの要因ではないか。
(千葉)
私たちがコンサルティングしているお客様でも、営業が書類手続きなどに奔走している印象が強い。色々な報告書を求められ、必死に作るが、マネジャーなどは必ずしもちゃんと見てくれなかったりして、事務処理で疲弊している印象がある。
また、外資SaaSをならってマーケティングやインサイドセールスなど分業体制を敷いたものの、そこからトスアップされる案件が営業のニーズと噛み合わず、無駄な工数がかかっているケースも散見される。具体的には、訪問してみたけどニーズもなければ、全く商談になる案件ではなかった、というようなケース。これらの無駄な作業も営業の生産性を下げている。
(絹村)
自身が事業会社にいた時、トスアップの基準を決めたりして効率化を図った。そうしたルール決めは、やらないよりやった方が良いのだが、それだけで上手く回るようになるわけではない。こうした基準を厳格にすればするほど、組織間の不協和音につながる印象がある。
途中から発想を変え、チーム間のコラボレーション・信頼関係構築に集中し、現場でのやり取りを密に行うことを実施したが、これは良かった。今はマーケティング・インサイドと営業の話だが、今後は営業とカスタマーサクセス間でも、こうした動きは重要になるだろう。
チーム目標 vs. 個人目標
(鶴原)
私は外資でも日系でも働いたことがあるが、外資は良くも悪くも縦割りが強い。部門間をオーバーラップして協業するのは、日系企業の得意なところでもある。その反面、目標管理に関して日系企業は「チーム目標」という曖昧なケースが多く、それが個々の「新規獲得」の動きに繋がっていない印象もある。そこはどう考えるか?
(福眞)
日本企業においてもジョブ型雇用が進んできており、営業は基本、個人目標を持つべきだと思う。
あと最近気になるのは、「売上」を目標にしている企業が多い点。これだと既に受注しているお客様から「いつ検収が上がるか?」という予実管理的な動きになり、営業の新規開拓に対するモチベーション・活動は減ってしまう。個人目標にすべきは「売上」ではなく「新規受注(New Booking)」であるべき。
SFA/CRMツールの真の活用
(鶴原)
今日、SFA/CRMツールは当たり前になったと思うが、「新規獲得」の活動を管理するためのツールではなかったのか?前半の千葉さんのセッションで、「SFA/CRMを入れたけど余り活用されていない」という話もあった。なぜSFA/CRMは活用されていないのか?
(千葉)
SFA/CRMは「入力すること」が目的化してしまっている。営業マネジャーと現場担当が欲しい情報は異なる。マネジャーはちゃんと見てもいないのに「あれも入れろ、これも入れろ」となるので、現場は誰も情報登録しなくなっていく。
(福眞)
私もIBM時代、ちゃんとSFA/CRMに商談情報を入れていたが、マネジメント層が見てくれず、商談レビューにばかり召集され、「商談は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」と怒ったことがあった。マネジメント層がちゃんと見てくれなければ、現場が使うはずがない。
(絹村)
現場の営業が役立つ情報を集める、ということも重要。Tableau時代、各営業が訪問したお客様がどのようなDB・アプリを使っているのか?を入力していたおかげで、業界や業種の特徴・傾向など全体感が見えるようになり、営業として市場アプローチしやすくなった経験がある。
今後、マーケやカスタマーサクセスと営業が持っている情報を相互利用する動きが活発になれば、もっとSFA/CRMは活用され、本来のバリューを発揮するのではないか。
論点②:今話題のカスタマーサクセス、成果を最大化するには?
カスタマーサクセスの目的
(絹村)
既存顧客からの売上を最大化するため、営業が動くのが従来だった。そうなると前段で話があった通り、営業が忙殺され、行きやすいお客様とそうでないお客様が出てきてしまう。また、新規受注に向けた活動は一層腰が重くなる。そうした背景から、既存顧客を専門とするカスタマーサクセス部門が生まれた。
SaaS以外でも最近はカスタマーサクセス部門の立ち上げが増えてきている。そうした中、「そもそもカスタマーサクセスって何なのか?」という議論も起きてきている。
元々、SaaSでカスタマーサクセスが出てきた背景は「LTV最大化」。LTVを大きくできれば、それだけCAC (Customer Acquisition Cost)にもコストを掛けることができ、新規受注も加速できる、という考え方。
(千葉)
コンサルティングにもカスタマーサクセスの立ち上げ相談が増えている。特にメーカー。例えば、製品にIoTなどを組み込むことで、利用状況や製品の状態などを把握し、故障予知や利活用促進などを通じて、お客様とのエンゲージメントを継続していくことが目的。
ただし、カスタマーサクセスとカスタマーサポートをまだ混同している印象がある。カスタマーサクセスは、契約の継続とアップ・クロスセルが責任範疇であり、本質的には「営業」。最大のKPIは、既顧客からの売上最大化になるが、コンサル的に新たな課題を見つけ、そこにチャレンジを促していくことも求められる。一方、サポートは製品・サービスを正しく使ってもらったり、困っていることを解決することがミッション。そこは異なる。
カスタマーサクセスで追うべきKPI
(鶴原)
会場から「お客様の成功と自社の売上がどう連関するのか、ピンときていない」という質問があった。ここはどう考えるべきか?
(千葉)
お客様に提案する際、「お客様の成功」が何なのか?しっかりと定義しておく必要がある。ここが曖昧だとお客様はROIを正しく計測できない。また、ここで出た成果(利益)を次のチャレンジ領域にどう活かしていくか、を一緒になって考えていく必要もある。
なお、コンサルティングファームではプロジェクト毎にKPIを握るので、その達成度合いを見られている。加えて、プロジェクトが終わる度、必ずお客様にたいして顧客満足度調査を行っている。
(絹村)
まず自社がお客様に提供できる「価値」が何なのか?しっかりと定義しておく必要がある。ここをCSM個人に委ねるとメッセージがブレてしまう。
NRR(Net Retention Rate)やGRR(Gross Revenue Retention)はあくまで結果指標。そこに至るまでの中間KPIをどう見ていくか、も重要。報酬に直結する部分は売上や利益といった会社のKPIと紐付いている必要があるが、昇進や評価といった部分については「人材要件」としてのKPIを設定していくのも良い。
カスタマーサクセス部門に求められるケイパビリティ
(福眞)
カスタマーサクセスにもビジネス成長の一翼を担ってもらう必要があり、営業的素養が求められる。一方、製品活用などについてもコンサルする必要も出てくるので、スーパーマンが求められる印象がある。
(絹村)
先日、WorkdayのGlobal CSM Headと会話する機会があったのだが、CSMのトップに求められるのは、お客様とのエグゼクティブ・エンゲージメントとのこと。これは営業のトップパフォーマーに求められているものと同じ。
反面、トランザクショナルに大量のお客様をさばくCSMもいたりする。この場合、製品・サービスの価値を正しく、ブロードにコミュニケーションしていくスキルが求められる。
最近のGainsightの調査では、数多くのCS組織が、営業と同じようなインセンティブ設計を導入し始めているらしい。平均すると年収の15%は個人インセンティブ。これは外資営業における40-50%に比べれば大きくはないが、徐々に増えていくだろう。
(鶴原)
マルケト社では、CSチームを拡充する際、元営業、元プリセールス、元サポートなど、様々なメンバーでチームを構成し、「契約処理」や「活用促進」などそれぞれの得意技をベースに役割を分けるような分業も行った。
単にカスタマーサクセス部門を作って終わりではなく、そこにどういった能力を持つ人材が求められるのか、を定義し、そこに対して様々な部門から優秀なメンバーを集めてくることも大切。
論点③:課題解決を「実現」させるには?
IT活用は大前提
(福眞)
「新規獲得」と「既存拡大」を実現していく上で「IT活用」は大前提であり、避けて通れないと思う。ただし、管理職世代が「ツールは面倒」「ITは使っても意味がない」と思っている傾向が、まだまだ残っている印象がある。
前述されていた通り、現場はツール活用を進めようと思っても、上の人間が見ていなければ徐々に使わなくなってしまう。全世代に向けてITリテラシを上げていくような取り組みは必要ではないか。
(絹村)
「生産性が低い」という話が前段であったが、米国企業におけるCSM一人あたりの担当売上は約2億円という調査結果がある。一方、これが日本企業だと一人あたり1億円に行くか行かないか、というケースが多い。約2倍の差がある。
生産性を上げていくためには、やはり勤務時間をより付加価値の高い、人間でないとこなせない領域に集中すべき。そして、昨今ChatGPTなども流行しているが、ITに任せられる所はどんどん任していくことが重要。商談管理、顧客管理、売上フォーキャストなどもその一つではないか。
従業員満足から始める(サービスプロフィットチェーン)
(千葉)
「サービスプロフィットチェーン」という考え方がある。これはES(従業員満足度)が上がれば、CS(顧客満足度)が上がり、それが売上・利益につながり、その利益を更にES向上に再投資していく、という考え方。
少し前まで猫も杓子も「DX」と叫んでいたが、DとXは逆であるべき。まずExperience(体験)を変えることが重要。Digital 1stではない。従業員の体験を変えなければ、顧客満足は上げていけない。従業員満足に向けては「働き方」も大事だが、「報酬制度」の見直しも重要になる。
(福眞)
賃金が上がらないと従業員は満足してくれないだろう。「セールスインセンティブ」と言うと最近は某中古車販売の例が取り沙汰され、余り良い印象がないかもしれない。しかし、本来は「報酬=経営からのメッセージ」。
報酬設計が、訪問しやすい既存のお得意様を日参していれば達成できるものであれば、当然、皆、新規を取りにいくような動きはしない。新規獲得・既存拡大、それぞれにストレッチなゴールを設定し、そこに正しくインセンティブを付与していかなければ、人の行動は決して変わらない。
相談は是非 EY・Xactly・Gainsightの3社へ
(鶴原)
最後の締めくくりになります。これからアクションを考えている皆さまは、是非このスライドに表示しているテーマ毎に3社にご相談を頂ければ幸いです。Japan Cloudにご連絡をいただく形でも構いません、適宜、お繋ぎさせていただきます。