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特別インタビュー

ソフトウェア業界の巨人たちと共に- New Enterprise Associates 社   ヒラリー・コプローマクアダムス氏(前編)

著者:福田 康隆
New Enterprise Associates 社 ヒラリー・コプローマクアダムス氏

今回は福田さんとともにNew Enterprise Associates (NEA) 社のベンチャー パートナー、ヒラリー・コプローマクアダムス氏を迎えてインタビューを行いました。同氏は30年以上のキャリアの中で、Oracle社のラリー・エリソン氏、Intuit社のスコット・クック、Salesforce社のマーク・ベニオフ氏といったソフトウェア業界の巨人たちの近くで仕事をしてきた貴重な経歴の持ち主です。一方、Salesforce社在職時には、一緒に働いていた福田さんにその深い業務知識とリーダーシップ スキルを伝授しており、Japan Cloudと関連会社各社も同氏の経験とノウハウの恩恵を受けているとも言えます。

現在、ヒラリー・コプローマクアダムス氏は、NEA社において世界で最もエキサイティングなエンタープライズ クラウド企業の創業者たちのメンターとしての役割を果たしています。多くの新進気鋭のクラウド リーダーたちが、同氏の寛容な人柄に触れています。日本市場への参入および現在の経済環境を乗り切るための同氏の知見は、大きな刺激をもたらすことでしょう。それではインタビューをお楽しみください。

なお、分かりやすくするためインタビューは編集されています。文中敬称略。  


長期的な視点で臨む心構え

アルナ: まず、NEAのバックグラウンドおよび他のベンチャーキャピタル企業との違いを簡単に教えていただけますか。その後で、こちらで用意しました質問にお答えいただければと思います。

ヒラリー・コプローマクアダムス(以下「ヒラリー」): 先程くださった日本に関する質問を見ていると、まるで福田さんと思い出話をしているように感じました。質問をまとめてくださり、ありがとうございました。

NEAは、複数のセクター、ステージ、地域の企業への投資において、数十年に及ぶ経験とノウハウを持つ世界的なベンチャーキャピタル企業です。ベンチャーキャピタル業界の創設企業の1社として米国の東西両海岸で事業を開始し、現在はサンフランシスコ ベイエリア、ワシントンDC、ニューヨーク、また欧州にオフィスを構えています。 

投資対象としてはエンタープライズおよびコンシューマー テクノロジー、また医療分野、特にライフサイエンス、メドテック(MedTech)、デジタル ヘルスに重点を置いています。  

当社のチームは投資家、経営者、専門家たちのユニークなバランスで構成されており、起業家の皆様がパートナー1社だけでなく、NEAの会社全体および外部のリソース ネットワークを活用できるチーム アプローチによる会社づくりを誇っています。

当社は、投資先の企業に補完的なスキルセットを提供します。私自身30年にわたるオペレーションの経験を投資先企業のGTM(市場参入)と企業規模の拡大に活かしています。私たちは1つのチームとして、アーリーおよびレイトステージにあるすべての優れた企業を観察し、どこに投資すべきなのか、ポートフォリオをどのようにサポートするのがベストなのかを判断しています。 

もう1つの大きな差別化要因として、私たちは長期的な視点に立って臨んでいる点が挙げられます。私たちが投資している企業が10年以上にわたる道の途上にあることも珍しくありません。私たちはチームとして取り組み、投資先である企業の成果を長期的な視点から考えます。会社を立ち上げた経験がある人なら、企業として成功を収めるためには多くの異なる部門にわたり膨大な時間と専門知識が求められることを知っているでしょう。そこで私たちは創業者の皆様との長期的な関係づくりを進め、企業の成長と成功を支援します。 

そのため私たちはトップレベルの優秀な創業者の皆様とパートナー関係を結び、成功を支援するために可能な限りの価値を提供することに注力しています。  

私がNEAに入社したのは、チームワーク、信頼、卓越性という同社の価値観に共感したからです。今もこれらの基本理念がチーム全体および各社で日々実践されているのを見ることができます。  


AIはあらゆるところに

アルナ: 特にエンタープライズ クラウド分野で貴社が興味深いと見ている企業はどのような企業ですか。

ヒラリー: 人工知能(AI)とマシンラーニング(ML)が主流になってきたことで、エンタープライズ市場はますますエキサイティングになってきています。これまでの10~20年はコンピューティングおよびデータの取り込みが中心でしたが、今はこれらのデータを最大活用してインサイト(知見)を引き出すところに主眼が移っています。  

実際に、多くの企業がセキュリティを強化し、生産性を高め、顧客とより深くつながるために、エンタープライズ環境におけるデータの格納とコンピューティング、アプリケーションインフラの構築、またデータを活用する方法を変革しています。 

クラウドがコンピューティングインフラのデファクトスタンダードになったことで、インフラの管理方法およびこのインフラを基盤に目的特化型のAI/MLプラットフォームを提供する形で、多大なイノベーションが起こっています。  

NEAは、例えばデータレイクにAI/MLを適用することで既存のデータから最大限の価値を引き出すことを可能にするDatabricksや、あらゆるクラウド環境、あらゆる言語で企業のインフラストラクチャ管理を最適にサポートするPulumi、また銀行やFinTech企業が顧客口座と安全にやり取りするアプリケーションの構築を実現するPlaidといった、数々のインフラ企業とパートナーシップを結んでいます。 

データ戦略が成熟するのに伴い、企業のワークフロー管理に対するNEAのアプローチも成熟しています。これは、RPA(ロボティック プロセス オートメーション)企業Automation Anywhereの成功、また最近当社が予測調達調整プラットフォームのArkestro、ML およびデータ オーケストレーション プラットフォームのUnion.aiへの投資に注力していることからも明確に見て取ることができるでしょう。

顧客サービスの分野では、私自身がUniphoreという企業の取締役を務めているのですが、この企業は会話型AIの効率化によって大規模なコールセンターを強化し、コールセンターのオペレーターが顧客の問題をより深く理解できるようにするための支援を行っています。パンデミック下では、コールセンターも急成長した分野の1つでした。 

人を中心に置いたAIによるアプローチで同種の顧客サポートの問題へのソリューションを提供しているForethoughtは、AIを搭載したプラットフォームを通じて複数のエンタープライズ企業および俊敏なテック企業と協業しています。

顧客サービス分野で最近の投資対象となったもう1社がAssembledで、同社の顧客は、より優れた要員管理戦略をコールセンターに展開することで、顧客満足と生産性の向上を促進しています。  

セキュリティ分野も、世界全体で常に成長している大きな機会です。セキュリティの大切さは誰もが知っていますが、いま私たちはセキュリティ態勢を強化するためには不断の取り組みが欠かせないことに気付き、実感するようになりました。  

NEAは10年以上前からセキュリティおよびパフォーマンス企業のCloudflareとパートナーシップを結んでいて、インターネットのセキュリティ、プライバシー、信頼性の確保を支援しています。同社はすでに日本に進出しており、事実として世界のインターネット資産の20%近くが同社のサービスを利用しています。

NEAはBeyond Identityというセキュリティ企業にも投資していますが、同社が開発したユーザーIDの認証にパスワードを必要としないパスワードレス アプローチにより、情報漏えいのリスクが劇的に軽減されます。  

ユニークなビジネス モデルのもう1つの好例がHackerOneです。同社はセキュリティ リサーチャーを雇用して顧客のインフラストラクチャへの侵入を試行し、成功した場合に顧客から報酬を受け取ります。このように侵入を試みてもらうことで、顧客はペリメータ(境界)セキュリティをより強化することができます。このビジネス モデルは、日本でも大きなポテンシャルがあると思われます。 

オブザーバビリティ(可観測性)も、興味深いカテゴリーです。クラウドを導入して日々ソフトウェア アップデートを受ける企業が増える中で、自社のソフトウェア体験のどこにエラーがあるのかを可視化するソリューションが必要になります。SentryDatadogおよびJapan Cloudのパートナー企業のNew Relicといった企業がこの分野を独占しています。 

このような企業の話はいつまでも続けられますが、この辺りで止めておきますね。

後編はこちらから

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