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2025.12.08

外資系IT営業キャリアのリアル|顧客の変革を導く──SaaS営業が描く新しいキャリアのかたち

木下 都

「外資IT営業キャリアのリアル」シリーズ

「銀行とお客様のために、金融業務をもっと良くしたい。」──地方銀行での経験を糧に、SaaS営業として金融機関の業務変革に挑む一人のビジネスリーダー。
キャリアの軸にあるのは、いつの時代も“顧客の成功”でした。
誠実に変革を導く営業のキャリアストーリーをお届けします。

中山 雅人

nCino株式会社
Regional Vice President of Sales

地方銀行に12年勤め、営業とデジタルマーケティングを経験。外資IT企業での製品営業を経て、nCinoに参画。銀行業務への課題感から、金融機関の業務とそのお客様のユーザー体験をより良いものにするための変革を提案している。

キャリアの原点と転職のきっかけ

銀行に支えられた原点──人と経済を支える仕事への誇り

新卒では地元・静岡で地方銀行(地銀)に就職しました。銀行は人や地域経済を支える、なくてはならない重要な役割を担っている。それが銀行を就職先に選んだ理由です。

はじめの6年は営業店で営業を、残り6年半は本部の企画業務を担当していました。企画業務では、いわゆるデジタルマーケティングの領域を任されたのですが、当時の銀行ではまだマーケティングへの理解が十分に浸透していませんでした。そこで、専門知識は独学で勉強し、身に付けていきました。

実際のマーケティング活動や、他の金融機関の方との情報交換を通して、金融機関はマーケティングという観点で改善できる点があると感じていました。銀行の業務は非常に無駄が多い。同じようなことを何回も稟議書に書いて、その稟議書に添付する補足説明書にも同じようなことを書く。その資料はWordやExcelで作って貼り付けるので、データがきちんと蓄積されていません。本来資産になるはずの非常に重要なデータが、全く活用できない状態にある。そこに課題感を持っていました。

地銀から外資SaaSへ──マーケティング視点で見た金融業務の課題

銀行のマーケティングはもっと良くできるんじゃないか、お客様の体験をもっと良くできるんじゃないか。そんな思いを抱いていた頃、SaaSのデジタルマーケティングツールを主力とする外資IT企業から、製品営業として働かないかとお誘いをいただいたんです。そこで転職を決め、3年弱ほど勤めていました。

SaaSの製品営業でも金融のお客様を担当していましたが、もう少し銀行の根幹である融資業務に関わりたいという思いが強くなっていきました。そんな時、nCino(エヌシーノ)を見つけたんです。

nCinoとの出会い──銀行業務の未来を変えるソリューション

銀行業界は今もすごく好きで、銀行員が働きやすくなるように、もしくは銀行のお客様がより良い体験ができるように、というのが私のキャリアの中で一貫したベースになっています。それを支援できるnCinoの仕事は完全に天職だと思いました。

自分が行員時代にこういうツールが欲しかったと思いますし、ソリューションの良さとして、金融機関の非効率な融資業務自体を変革し、将来的に資産となるデータをしっかり蓄積し、使える状態にできる。銀行員にとっても働きやすくなり、銀行にとってのお客様にも喜ばれる提案ができる。nCinoの営業は自分にすごく合っている仕事だと思っています。

 

新しい環境での挑戦と成長

Japan Cloudの支援がもたらす安心感と信頼

転職に際しては、Japan Cloud関連会社である安心感はとても大きかったです。「自分を試したい」「スタートアップに行きたい」と思っている人はけっこう多いと思いますが、スタートアップはリスクも大きい。外資の場合は撤退リスクもあります。その点、「Japan Cloudが伴走している企業なら、『ある日突然日本法人を閉じる』ということはないだろう」と思えることは重要でした。

それはお客様にとっても同様です。私が当社に入社したばかりの頃、まだnCinoが日本で立ち上がったばかりで、導入を検討いただくお客様は必ずと言っていいほど撤退リスクを気にされていました。お客様に対しても「Japan Cloudの支援があるから簡単に撤退しない」と言えるのは大きなポイントになっていたと思います。

実績ゼロからの挑戦──未知の市場を切り拓く営業の醍醐味

私が入社した頃は、まだnCinoを導入いただいている金融機関は3行ほど。営業に行くと「nCinoという名前を初めて聞く」という方がとても多かったです。良くも悪くも、見渡す限りすべての金融機関が営業先でした。どこに行っても新規のお客様で、商談が作れるというのは当然やりがいがあります。一方で、特に金融機関の場合、他行での導入実績を非常に重視する傾向にあります。初回の面談でほぼ間違いなく他行での実績を聞かれていました。まだ実績が全然ない状態で営業活動をするのはとても難しいものです。特に融資支援システムは銀行業務の根幹ともいえるもの。検討のタイムラインが非常に長く、クローズまで1年以上かかるような商材なので、導入実績もすぐには増えません。

すでに何百社も導入されているところに新規で一社契約というよりも、まだ日本で全く実績がない段階で一件ご契約いただく方が、その重さも業界へのインパクトも全然違います。自分が営業努力を重ねて成約したお客様が先行事例になり、かつ私たちにとって貴重なお取引先様になるというのは、すごくやりがいを感じています。

業務知識と提案力──信頼を生むSaaS営業の本質

融資の用語は難しい独特な言い回しの言葉が多くありますが、それを言われてもすっと理解してさらっと回答できるのは、銀行の方々から信頼を得る上ですごく重要だと思っています。銀行員は共通言語で話せることをすごく重視するんですよね。nCinoほど銀行勤務で得た知識が必要になる会社はあまりないのではないでしょうか。

一方で、本来は彼らの業務を改善する提案をしなければならないんですが、銀行のことを知り過ぎていて、相手に寄り添い過ぎてしまい強めに押せない場面もあったりする。そういうときは、当社の代表・野村や銀行勤務の経験がないメンバーと一緒に訪問することで、お互いの足りない部分を補えている部分がありますね。

カルチャーと営業スタイルの変化

オープンでフラットなカルチャー──挑戦を後押しする環境

オープンでフラットなコミュニケーションのカルチャーを、野村は特に大事にしていると感じています。謙虚で素直で、しかし言うべきことをきちんと言う。でも最初はそれに戸惑いもありました。銀行は上意下達のところがあり、失敗が許されない文化。当社は素直に誠実なコミュニケーションをすることが求められ、野村に対しても「違う」と思ったら違うと言わなければならない。それは銀行とは非常に大きなギャップでした。

前職も外資でしたが、企業規模が違いますし、以前は英語に触れる機会がほとんどありませんでした。当社に入ってからはイネーブルメントの教材が英語だったり、契約書も一部日本語翻訳されてないものがあったり。アメリカ本社とも距離が近く、役員ともミーティングがありますし、アメリカでの会議やイギリスでのキックオフにも参加しています。

私が幸運だったのは、ローカルな地銀と外資系スタートアップである当社の間に、外資での勤務経験を挟んでいたこと。前職の外資とも当社はまったく異なりますが、地銀からいきなり当社に転職していたら、もっと大きなカルチャーショックを感じていたかもしれません。

「変わらなければ一生変われない」──真摯に顧客と向き合う営業

社内だけでなく、お客様とも真摯なコミュニケーションを心がけています。nCinoは銀行業務を大きく変えるソリューションなので、これまでの融資業務の非効率なやり方を変えるために、銀行の方々に業務を変えていただく必要があります。しかし商談が終盤になると、お客様は迷ってしまうことが多くある。業務を変えることに不安を感じたり、意思決定を回避しようとしたり。そういう場面では、私はお客様に対して真剣になるあまり、語気を強めてしまうこともあります。「今変わらなければ、もう一生変われない」「あなたが決断してくれなければ変わらない」と伝えました。

結果的にそのお客様には成約をいただき、「あの時怒ってもらえて良かった」と言っていただけた。真剣さが伝わったのだと思います。営業はどうしてもお客様の顔色をうかがうことが多いですが、お互い誠実に真摯に話をしながら、時として自分の強い意志を伝える必要がある。私はそれをnCinoに入ってから学びました。

キャリアの進化とこれから

チームで顧客の成功をつくる──SaaS営業の醍醐味

当社は社員が増え、私が入社した頃とは違う次のフェーズへと移っていく時期であると感じています。日本市場で拡大していくために、製品に関しては、日本向けのローカライズや日本独自のやり方にも対応していく必要性を感じています。今後、日本独自の機能も展開していくかもしれません。

私自身のフェーズとしても、チームの数字を達成する、仲間のサポートをするといった役割を、しっかり身につけていく必要がある段階です。私はnCinoを「これがないと競合についていけない」と言われるくらい、日本に定着するソリューションにしていきたい。営業の立場として、そこまで貢献したいと考えています。そう考えたときに、自分1人でできることには限りがある。他のメンバーの契約のクローズをサポートする、案件がドライブする方法をアドバイスするということを、今後やっていく必要があります。

現在はRegional Vice President of Sales(営業部長)という肩書きはありますが、実態としてはプレイヤー。これから当社をより一層伸ばしていくためには、自分の案件だけにフォーカスするのではなく、組織全体の観点で俯瞰的に見ていかなければならないと意識しています。周りのサポートをしっかりしながら、成約数を加速させていく。そうした役割を担っていきたいと考えています。今はまだマネージャーロールとして立つほど大きな組織ではありませんが、いつそうなっても良いように準備をしておきたいと考えています。

すべては顧客の成功のために──キャリアのこれから

外資系企業の営業職は成果の数字を強く求められイメージがあるかもしれません。当社も当然、数字に対してのプレッシャーはあります。しかし数字は当たり前にやるべきこととして、お客様の成功や、お客様からの信頼を勝ち取ることを重要視しています。一般的にイメージされる外資と違って、お客様に対しても社員に対しても、すごくウェットなカルチャーだと思います。

私自身も、当面は当社でキャリアを積み重ね、契約していただいたお客様、今後お客様になるであろう金融機関にも成功していただきたいと思っています。

そして中長期では、「銀行の役に立つためのキャリア」を考えていきたい。もしかしたらいつかは銀行に帰るかもしれません。銀行ではアルムナイを受け入れる文化はまだほとんどありません。そんな中、外資でバリバリやっていた人間が銀行のDX部長になる、役員になる、ということがあっても良いと思いませんか。今も静岡の自宅から在宅ワークをしているのですが、もし私が銀行に帰ったら、出社しない銀行員になりたいですね。そしてJapan Cloudの関連会社にどんどん人材を送り込んで、循環させたいです。それが銀行業界に新しい刺激となり、人材の流入・流出が活性化するような流れをつくれたら──そんなキャリアも面白いと思っています。

(肩書きは取材時のものです)

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